最強でいてよ、僕の特別

松村北斗くんと藤原丈一郎くんとそのまわり。

初恋サイダー

 

ドリ小第2弾。登場人物は実在の人物とは一切関係ございません。ご了承ください。
✄--------------- キ リ ト リ ---------------✄
 
「藤原くんと__って幼馴染みなんやろ?羨ましい。」
何度も何度も聞いた言葉。その度に私は
「そんなことないで。アイツうるさいし、チビやし。」
そう否定する。テンプレみたいなものだ。
「おい、__。帰んで。」
「うん」
幼稚園の時から高校生になった今でも、ずっと私は幼馴染みの藤原丈一郎が好きだ。小さい頃からずっと続いていることで、もはやそれがルーティンになっているから丈は何とも思っていないかもしれないこの二人きりの登下校だって、私にとっては怖いくらい幸せなことなのだ。
「お前さ、好きな奴とかおるん?」
ドキリとさせられた。私の心を見透かされてしまったのかと思った。だから、
「さあ、どうやろうな」
否定とも肯定ともとれるような曖昧な返事をして隠すしかなかった。ここで、丈が好きだと言ってしまえば、今まで通りではいられないと直感的に思ったから。
「なんやその言い方!」
「居ったら丈と二人でなんて帰らんわ。あと声デカい。うるさい声も顔も。」
「顔がうるさいは余計やろ。」
憎まれ口を叩く余裕なんてどこにもないのだけれど、こうでもしない限り君に気持ちがバレてしまいそうだ。くだらない話に笑って、軽口を叩き合うくらいの距離感で毎日を過ごすけれど、丈の癖や性格は、他の子よりも知っている。
「じゃあな、」
「うん、また明日。」
丈と過ごす時間は圧倒的に短く感じられて、本当に同じ配分で時間が進んでいるのかと疑いたくなるほどだ。だから、別れ際はいつだって寂しい。でも、丈は私の彼氏じゃないから、寂しいと素直に言うなんてことはできない。なんてことないふりをして、丈に気持ちを悟られないように、丈から逃げるように家に入ることでしか、自分を守れない。
 
気がついたらいつも隣にいて、恋愛関係ではもったいないくらいかけがえのない人が、俺にとっての__だ。今更女として好きだなんて言えないくらい、大切な友達。だから、好きな人がいるのか聞いたとき、もし居る、と答えられたらと考えると、考えるだけで恐ろしい。幼馴染みというポジションに甘えて一歩を踏み出せない自分に嫌気がさす。
「おはよう、丈。お前さ、__のこと好きなん?」
「はぁ?」
朝、いつもと同じように__と登校して、自分の席に着く。すると友人の北斗から突然投げかけられた言葉。
「どうなん?」
笑って誤魔化そうと思ったけれど、それができないくらい北斗の目は真剣で。
「別にただの幼馴染みやで」
その視線に耐えれない。ただの幼馴染みだと言い聞かせているような気がして、苦しい。多分、北斗は___のことが好きだ。
 
「藤原君、ちょっといい?」
俺を呼んだ工藤里保ちゃんは、__とは違う、ふんわりした可愛い雰囲気の女の子。特別話すわけでも、話さないわけでもない。
「ん?」
「あの、私、藤原くんのことが好きやねん。」
「そっか、」
「でも藤原くん、__ちゃんのことが好きやんな?」
「いや、別に好きちゃうで。アイツは幼馴染だから仲ええだけやし。」
自分に言い聞かせるように、答える。なんとなく、アイツとは付き合うとか、そういう類の関係になるのは違う気がした。
「え、」
「だから、付き合ってもええで。」
性格も可愛いし、付き合わない理由はなかった。
 
丈が里保ちゃんと付き合い始めた話なんて、すぐに回ってきた。今までずっと隣にいた丈が、少し離れた気がして寂しかった。一緒に登下校することもなくなったし、学校でも殆ど話さなくなった。
「__ちゃん」
そんなある日、松村くんに呼ばれた私。
「まつむら、くん?」
「あのさ、丈やなくて、俺にせぇへん?」
「え?」
「丈のこと忘れさせたるから。」
意味が分からない。私が丈のことを好きだなんて、一言も言ってないのに。
「好きな人の好きな人はわかるって言うやろ?」
「でも、今の私と松村くんが付き合ったら、松村くんに失礼やん。」
「失礼ちゃうよ。今から絶対好きにさせたるから。」
自信たっぷりに言う松村くんは、なぜかすごくかっこよく見えて、次の瞬間にはもう頷いていた。
 
里保ちゃんと付き合うようになってから、__との時間が減った。いつも隣におったし、__以外の女の子とここまで長時間二人きりでいることなんて殆どないから、リズム感が掴めない。俺がいらん事したら、里保ちゃんはどんな反応をするだろうか、嫌いになるだろうか。そう考えると、いつもみたいにはいられない。そんな風にモヤモヤしながら教室に着いた朝。
「丈!__ちゃん、北斗と付き合うことになったらしいで!!」
友人の口から発せられる衝撃。
「は?」
「北斗から告ったらしい」
なんで。北斗なん。それだけが俺の思考を支配する。__は、俺のそばにおったらええやん。なんで。幼馴染やん。その日のことはほとんど覚えていない。里保ちゃんに
「今日の丈くんなんか変やで?どうしたん?」
そう聞かれてしまうほどだ。心が、晴れない。
 
松村くんと付き合うようになって少しして、呼び方が北斗くんに変わった。いつでも優しくて、素直で、女の子扱いしてくれる北斗くんのことは、確実に好きになっていた。街で何かを見ると、北斗くんに見せたい。って思うようになったし、美味しいものを食べれば、今度は北斗くんと食べたい。そう思うようになった。でも、心のどこかに丈の存在は常にある。学校で里保ちゃんと仲睦まじげにしている丈を見るたびに泣きそうになる。その感情を、恋心と呼ぶのはきっと違う、と自分の中で解決する。
そんなある日。
「あ、」
「よぉ、」
家の前で丈と鉢合わせした。こんなこと、最近は滅多にになかったのに。
「里保ちゃんと、どうなん?」
気まずくて、自ら墓穴を掘るような質問をしてしまった。
「普通やで。でも、お前と居るときの方が落ち着くわ。」
「は、」
「里保ちゃん、お前と違って女の子って感じで可愛いから、緊張してしまうねんな。」
「可愛くなくて悪かったな。」
軽く丈の足を踏む。この感覚が、この空気感が、私は大好きなのに。きっと丈は違う。里保ちゃんが、丈の頭を占領しているんだ。
「痛っ!暴力女!」
頭を軽くはたかれた。丈にとってはなんてことない事なんだろうけど、私にとっては違う。
「うわ。女の子の頭叩くとかありえへん。北斗くん絶対そんなことせぇへん。」
「北斗と比べんなや。」
「比べてへん。」
「惚気か」
「ちゃうわ!私もう家入るから。また。」
丈に北斗くんののろけを話してると思われたくなくて、逃げるように家に入る。北斗くんのことは好きだけど、やっぱり私が好きなのは丈なんだ。
 
それから暫く経って、里保ちゃんに呼び出された俺。
「丈くんさあ、ええ加減気付いた方がいいと思うで。」
「え?」
「私のこと、ほとんど見てへん。丈くんが好きなんは、__ちゃんやろ?」
俺は、__が好きや。言われて気付くなんて遅いけど、好きや。いつも近くでいらんことばっかしてる__が好き。
「ごめん。」
「謝らんでよ。わかってたことやし。丈くんと付き合えて楽しかった。」
最後に見た里保ちゃんの目は、揺れていた。
 
丈が里保ちゃんと別れた、なんて聞いて安心する自分がいた。北斗くんには申し訳ないけど、あの日以来私の心は完全に丈だった。
「__ちゃん。」
「ほくとくん、」
「__ちゃん、俺のこと好き?」
「好き…やで。」
素直に、答えられない。
「じゃあ、友達に戻ろ。」
「え、」
「丈のこと忘れさせたる、って言ったけど、無理やったな。」
そんな泣きそうな顔で言わないで。
「ごめん。ごめんね。」
私まで泣きそうになる。
「丈のとこ行き?」
最後まで、北斗くんは優しかった。私はそんな北斗くんに、最後まで甘えていた。
 
その日の放課後、最寄り駅で丈の姿を見た。
「丈!!!」
今を逃せば、いつになるかわからない。だから、今伝えなければ。
「__っ」
驚いたように私を見る丈の唇に、私のそれを重ねる。人目なんて気にしなかった。「愛してる」とか、「大好き」とかよりも、一番伝わる方法だと思ったから。
「…__」
唇を離すと状況が理解できていなさそうな丈。
「…ごめん。好き。」
いきなり、キスしてごめん。っていうのと、改めて、丈のことが好きだと、言葉にする。
次の瞬間、もう一度私たちの距離はゼロになった。
「男に言わせろや。アホ。」
耳を赤くして私の頭をぐしゃりと撫でた丈の言葉の意味は聞かなくても分かった。
「俺も、好きやで。」